大気中の二酸化炭素の増加が、大気-地表エネルギー交換に及ぼす影響の予測を行った。室内実験の結果より、二酸化炭素濃度が現在の2倍になると、植被表面からの蒸発散量が10%程度減少し、植被表面温度の上昇がもたらされることがわかった。この原因として、高二酸化炭素濃度下で生育した植物は、気孔数が減少して気孔抵抗の増大が生ずることが挙げらげる。また、二酸化炭素の施肥効果によって群落形態の変化も認められ、顕熱輸送係数は、5%程度増大した。 実験から得られた、気孔抵抗と境界層抵抗の値およびPenman-Monteith式を用いて、現在の屋外で観測される気象条件下で、二酸化炭素倍増条件下で生育した植被面に発生する放射収支の変化予測を試算した。その結果、現在より潜熱量は10%程度減少し、顕熱量は20%程度増大し、表面温度は2℃高くなることが予測された。また、純放射量は15%程度減少することがわかった。この結果は、現在の植被モデル(SiB等)を用いた気候変化予測値と異なるものであった。 現在、気候変化予測に用いられているGCM内の植被モデルは、温室効果による温度と土壌水分量の反応のみが考慮され、植物の生理生態的変化が考慮されていない。本実験の結果から、植物の生理生態的変化のみでも十分に気候変化を引き起こしうることが示されたので、今後これらの変化も含んだ植被モデルを開発していくことが必要である。
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