本研究は、窒素酸化物排出量の低いメタノール自動車の導入が、大気環境におよぼす影響を、特に太陽光度の小さい条件のもとで評価しようとするものである。対象地域としては、100km^2未満の一様な都市域を考えた。気象条件としては、冬季および夏季の、晴天および曇天における評価をおこなった。ここでは、首都圏を対象とした場合のコンピュータシミュレーションによる結果について述べる。 大気中に存在するホルムアルデヒド(HCHO)濃度は、一次排出、オレフィン系炭化水素等からの生成、および反応による消滅によって決定される。夏季の晴天時においては、オレフィン系炭化水素から生成するHCHO量が多く、HCHO排出量が増加しても、オレフィンを減少させればHCHO濃度増加はしないことがわかった。特に冬期の曇天では、混合層高度も低く、一次排出の影響が非常に大きくでてしまい、HCHO濃度の増加が著しい。しかし、冬期においてはHCHO排出量と大気中のHCHO濃度はほぼ比例しており、ある程度定量的な予測が可能であると考えられた。また、それによると、メタノールバスは0.05g/km、メタノールトラックは0.036g/km以下であれば、冬期の曇天下においてもHCHO濃度レベルを上昇させることなく、メタノール自動車の導入ができるのではないかと考えられる。 また、冬季における窒素酸化物への酸化還元機構については、HCHOの影響よりも、圧倒的にバックグランドオゾンによるNOの酸化速度が大きく、メタノール自動車導入によってHCHOが増加したとしても、大きな影響を与えないことがわかった。普通貨物車およびバスのすべてをディーゼルタイプメタノール自動車に転換した場合、窒素酸化物削減効果は、冬期の晴天型で8.0%、および曇天型で8.1%となった。
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