研究概要 |
本研究計画では、大腸菌タンパク質膜透過装置の反応機構を解明する目的で、1)膜透過反応中間体をin vitroで可逆的に捕捉するための基質・阻害剤系を開発し、2)これを用い、野生型またはsec突然変異体より調整した細胞質膜反転膜小胞における膜透過反応中間体を蓄積、これと相互作用している因子を同定する、の2点を目指した。 現在までの進捗状況pro-OmpA-Hisおよびpro-MBP-Hisを発現・精製する系を確立した。まず、大腸菌分泌タンパク質OmpAおよびMBPのC-末端に6個のヒスチジン残基をもつ融合タンパク質過剰発現プラスミドを構築した。分泌タンパク質前駆体の精製にはこれを細胞内に蓄積させる必要がある。このため、極めて強い分泌阻害を,Ydrの過剰生産とsecY24突然変異により誘起した株内で、これら基質タンパク質を上記プラスミドより発現させた。この株から,Ni-NTAagaroseとDEAE-SepharoseまたはButyl-Sepharoseの組み合わせによって,pro-OmpA-Hisとpro-MBP-Hisが各々精製された。得られたpro-OmpA-Hisは、野生型のpro-OmpA同様in vitroの膜透過反応の良い基質となった。一方,Ni^<2+>と錯体を形成するnitrilotriacetate(NTA)基とアミノ基をもつ分子をリジン誘導体より化学合成し、これを2価架橋剤をもちいてアビジンに結合した。NTA-アビジンは、Hisタグと強く相互作用し、基質タンパクの膜透過を妨げると考えられる。現在、この架橋反応産物より,NTA基を1つもつアビジンを精製中である。 今後の展開 予想したとおりにHisタグを含む分泌タンパク質前駆体の膜透過が、NTA-アビジンによって阻害されるかを確かめている。この後、基質タンパク質におけるタグの導入位置を変えたものを作成し、これらを用いて反応を止めた場合に基質と相互作用している膜透過装置の構成成分に違いがあるか、また、sec突然変異体より調整した膜小胞での反応で差異があるかなどを解析して行きたい。
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