研究概要 |
咋年度までに,光合成細菌Rhodobacter capsulatusの3種のフェレドキシン遺伝子fdxN,fdxA,fdxCに関する分子生物学的解析により,FdxNとCが窒素固定系で機能するのに対し,7鉄型のFdxAは恒常的に発現する必須蛋白質であること,また,この機能上の相違は発現量ではなく構造上の相違に起因することを明らかにした。また,FdxAは生理機能不明な必須蛋白質で,破壊株に変異遺伝子を導入する定法を適用できないため,予め変異fdxA^*遺伝子をプラスミドとして保持させた部分2倍体の野性型fdxAだけを選択的に破壊するシステムを構築し,構造-機能解析を行なう土台を作っている。これにより,変異fdxA^*と生理機能の相関をより精密に解析した。 1)[3Fe-4S]クラスター周辺のCys11とCys16間の配列を,Lys-Tyr-Thr-AspからGly-Alaに変換する改変遺伝子(fdxAGA)を従来作製していたが,さらにGly-AspならびGly-Asnとするもの(fdxAGDとfdxAGN)を作製して解析を加えた。この結果,fdxAGDのみを持つ変異株は,fdxAGAのみを持つ変異株同様,光合成により生育可能だが,呼吸では生育不能であった。一方,fdxAGNのみを持つ変異株は全く得られなかった。従って,Cys16隣接残基の側鎖へのアミノ基の導入が,生理機能の完全な喪失をもたらすことが明らかとなった。 2)既に,C末端側10残基がこのフェレドキシンの生理活性に必須であることを明らかにしていたので,C末端側より2,6ないしは8残基を欠失させる変異遺伝子(fdxA109,gdxA105およびfdxA103)を作製し,この領域の精密な解析を行なった。C末端6残基を欠失させたfdxA105のみを持つ株は,光合成により生育可能であるが,呼吸では生育不能であった。この株から比較的高頻度(10-3程度)に呼吸でも生育可能な2次変異株が生み出されることが見出した。現在,この復帰変異に関わる遺伝子のクローニングを試みている。
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