線虫C.エレガンスは、雌雄胴体の302個の神経からなる全回路構造が明らかにされており、神経回路形成機構研究のモデル動物として有用である。本研究は、分化マーカーを用いて行動異常や致死を示す変異株の神経回路の形態を解析し、C.エレガンスの神経回路の形成機構を明らかにすることを目指している。 1.プロモータートラップ法による神経特異的なマーカーの作製 C.エレガンス染色体DNA断片をlacZ融合ベクターのbeta-ガラクトシダーゼ遺伝子の上流に挿入して作製したライブラリーを、約100クローンからなるプールに分けた。各プールより調製したプラスミドをC.エレガンスに導入して得られた形質転換株のbeta-ガラクトシダーゼの発現分布を解析した結果、約20%のプールで頭部の神経での発現が観察された。これらのプールより単離した陽性のクローンを染色体に挿入した線虫株を解析し、特定の一対の神経で発現しているものや、ほとんどの神経で発現しているものを得た。クラゲの蛍光性タンパク質のcDNAをlacZの代りに用いて、生きている線虫での神経の観察が可能になった。また、C.エレガンスのゲノムプロジェクトから、神経で機能していると推定される遺伝子を利用したマーカーの作成を検討している。 2.神経系に異常を持つ突然変異体の探索 行動異常を示す変異体として、頭部の運動異常を示す変異体を単離し、連鎖群を決定したが、詳細な解析は、まだ行っていない。今後は、致死性を示す変異体の分離も試みる予定である。
|