細胞外マトリックスによって引き起こされる細胞骨格の調節系を探るためにまず細胞骨格構成タンパク質のリン酸化型を認識する抗体の作成を試みた。既にアクチンをリン酸化する酵素であるアクチンキナーゼ同定及び精製に成功しているので、まずアクチンのリン酸化部位に相当するペプチドを合成した。アクチンキナーゼを用いてこのペプチドのリン酸化を行ったが、アクチンキナーゼはこのペプチドを認識しなかった。現在までに報告されているプロテインキナーゼでリン酸化部位そのものを認識しないキナーゼは極めて少ない。このことはアクチンキナーゼが一次構造のみならず立体的な構造を基質として認識している事を示している。今後このような基質特異性の高いキナーゼはペプチドではなく、未変性のタンパク質を用いて発見される可能性が高い。また、この実験と平行してアクチン重合部位をリン酸化するキナーゼの検索や、細胞分裂に重要な役割をはたしていると考えられているセントラクチン(アクチンと相同性の高いタンパク質)のリン酸化酵素の同定を試みている。このような実験は、今後細胞分裂機構や細胞接着に関わる細胞骨格の調節機構が解明される引き金になると期待される。
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