1.色素化に必要と知られているTRP-1(tyrosinase-related protein 1)遺伝子のcDNAを新たにウズラ色素上皮細胞cDNAライブラリーよりクローン化し、全長のシークエンスを決定した。 2.TRP-1およびすでにクローン化したtyrosinaseとmelanosomal matrix protein(MMP115)のcDNAをプローブとして、Northemブロットにより、野性型とsex-linked albinoの色素上皮細胞における遺伝子発現を解析した結果、3種の遺伝子ともその発現にまったく差がなかった。 3.色素上皮細胞特異的なプロテアーゼインヒビター様分子をコードするPP344cDNAをプローブとしたin situハイブリダイゼーションをおこなったところ、pp344遺伝子は、網膜色素上皮では強く発現するが、毛様体および虹彩色素上皮では発現しなかった。 4.ギャップ結合タンパク質であるコネクシン43cDNAをプローブとしたin situハイブリダイゼーションの結果、毛様体および虹彩の色素上皮で強い発現がみられたが、網膜色素上皮ではほとんど発現が見られず、pp344と相捕的な発現パターンを示した。 以上、sex-linled albino変異の原因は同定できなかったが、新たにpp344および、コネクシン43遺伝子が、色素上皮細胞の部域差を反映し、しかも相捕的な発現様式を示すことが明らかになった。そこで、これら遺伝子の発現制御機構および、sex-linked albino変異の分子機構を解析することによって、一層の眼杯外層が網膜、毛様体、虹彩の色素上皮へと部域化する分子メカニズムを明らかにできる道が開けた。
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