アフリカツメガエル卵母細胞を用いた発現クローニングにより、ラット大脳からグルタミン酸トランスポーター(GluT-1)の単離に成功し、その構造決定・特性解析を行った。GluT-1は543個のアミノ酸からなる分子量60kDaの膜蛋白質である。疎水性の解析からGluT-1は6個の膜貫通領域を持ち、他の神経伝達物質トランスポーター(セロトニン、ドーパミン、GABA、グリシンなど)とは一次構造・膜内トポロジーが異なり、新しいスーパーファミリーを形成する。GluT-1のmRNAを卵母細胞に注入し、^3H-glutamateを用い特性解析を行った。GluT-1はNa^+依存性のグルタミン酸取り込み活性を示し、その親和性は62muMであった。また、ジヒドロカイニン酸、beta-グルタミン酸などのブロッカーによりその活性は抑制されたが、阻害剤に対する感受性は以前報告されたグルタミン酸トランスポーターに比べ著しく低い。GluT-1のmRNAは脳にもっとも多く存在し、少量ではあるが腎・精巣・肺・筋肉などの末梢組織にも存在した。In situハイブリダイゼーション法により脳内での分布を詳細に調べると、GluT-1は主にグリア細胞に存在した。以上の結果は、GluT-1がグリア細胞膜上に存在する新しいタイプのグルタミン酸トランスポーターであることを示している。GluT-1の生体内での機能を調べるためマウスGluT-1のcDNA・遺伝子を単離し、構造解析を行い、ジーンターゲッテイング法によりグルタミン酸トランスポーター欠損マウスを作成中である。
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