研究概要 |
1.目的:哺乳類の中枢神経において、ATP感受性Kチャネルがシナプス伝達の調節に重要な役割担っている可能性について検討した。 方法:新生仔ラットの培養海馬ニューロン間のシナプス伝達を、シナプス前、後の両ニューロンを共にwhole-cell clampする「double whole-cell clamp法」を用いて測定した。 結果:(1)ATP感受性Kチャネルの活性化剤(diazoxide およびcromakalim)は、GABA性の抑制性シナプス後電流の振幅を減少させた。この作用の少なくとも一部は、シナプス前終末からのGABA放出量の低下によることが判明した(Shosaku et al.1993,Neurosci.Lett.)。したがって、抑制性シナプス終末部のATP感受性Kチャネルは、シナプス伝達の調節に関与しうると考えられた。(2)抑制性シナプス伝達のGABA_B受容体を介するシナプス前抑制にシナプス終末のKチャネルが関与していることが知られている。しかし、GABA_B受容体のアゴニスト(baclofen)による抑制性シナプス伝達の抑制は、ATP感受性Kチャネルの阻害剤(tolbutamide)で阻害されなかった。したがって、ATP感受性KチャネルはGABA_B受容体を介するシナプス前抑制に関与していないと結論された。 今後の研究方針:抑制性シナプス伝達が虚血にきわめて弱いことが知られている。この虚血による抑制性シナプス伝達の抑制にATP感受性Kチャネルが関与する可能性について検討する予定である。
|