ハイブリッド型人工肝臓の開発のためには、肝細胞の高密度大量培養技術の確立が不可欠である。研究代表者らは、多孔質の樹脂(polyvinyl formal樹脂多孔質体;pvf樹脂)を用いることにより、肝細胞を1×10^7cells/cm^3の高密度で、1週間以上にわたって培養可能であることを報告してきた。本研究は、肝細胞の機能をさらに長期間にわたってより良好に維持することを目的として、PVF樹脂を担体とする肝実質細胞と非実質細胞の混合培養を行い、非実質細胞が固定化肝細胞の機能の維持に及ぼす影響について検討した。 肝実質細胞はラットからコラゲナーゼ灌流法によって採取し、非実質細胞としてラットの肝由来非実質細胞を用いた。担体として平均孔径250mumのPVF樹脂を20×20×2mmに細切して用いた。担体を35mmのペトリディッシュ内におき、肝細胞単独、肝細胞+肝由来非実質細胞のそれぞれの細胞縣濁液を担体上から注入することにより細胞を播種し、3週間の静置培養を行った。対照としてコラーゲンをコートしたディッシュを用いて単層培養を行った。培養肝細胞の活性は、アンモニア代謝能、尿素合成能、アルブミン分泌能から評価した。培養終了後、担体内に固定化された細胞を走査型電子顕微鏡にて観察した。 肝細胞のアンモニア代謝・尿素合成能は、PVF群、ディッシュ群のいずれもほぼ同様の傾向で培養期間とともに徐々に低下した。また、肝細胞単独群、混合培養群の間には明らかな差を認めなかった。一方、アルブミン分泌能は、培養初期にはディッシュ群が高い傾向を示したが、1週間以降ではPVF群が高値を示し、PVFを用いる培養系が、肝細胞の機能維持に有用であることが示された。SEMによる観察では、肝細胞は球形を保ったまま、担体内に固定化されていた。
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