重度身体障害者介助システム用の注視点検出装置の開発研究を行った。従来法では、赤外線を眼に照射し、角膜反射光(glint)と瞳孔像を赤外線カメラで捕らえ、両者の位置関係から視線方向を検出した。この方法は、被験者に非接触であり望ましい方法である。しかし、瞳孔と周囲の部分の輝度差はあまりなく、瞳孔抽出が難しく実用化まで達していなかった。本研究では、まず、次の述べる2光源と画像差分法を用いた瞳孔抽出法を提案した。ビデオ信号のodd field時に、カメラの光軸上に設定した近赤外線LEDで眼に赤外線を照射しbright eye(瞳孔が周囲より明るく光る現象)を出現させ、even field時に光軸上からずれたところに設定したもう一つのLEDで瞳孔を暗させた(dark pupil)。そして、odd時の画像からeven時の画像を差し引いた差分画像を求めた。この画像では、背景がほとんど消えてなくなり、瞳孔部だけが明確にあらわれた。この方法によって、しきい値も固定でき、簡単に瞳孔抽出ができることを示した。本手法が瞳孔検出において有効であることがわかったので、連続的にビデオ信号の差分を行うための回路を製作した。その装置の出力を以前試作済の瞳孔中心算出回路に入力した。この回路には、ノイズ除去回路が付加されており、差分時に生じる多少のノイズも完全に除去し、瞳孔中心が実時間で(1/60秒ごと)安定して検出できることを示した。 この他に、最低の赤外光強度で、瞳孔を効率よく検出するために画像ボードを用いて、詳細に検討を行った。
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