本研究の目的は、創傷治癒促進あるいは器官構成を目的とした結合組織再建用マトリクスの新しい設計概念を提唱し、モデル物質として機能性配糖体ハイドロゲルを合成してin vitroおよびin vivoにおける効果を実証することである。 具体的には、配糖体ハイドロゲルの糖部分を硫酸化し、サイトカイン結合能を付与する。これを単独で、あるいは我々の開発した創傷治癒促進剤と組み合わせて生体内に埋入し、組織修復の第二段階である炎症細胞の不活性化と繊維芽細胞の早期浸潤誘導効果を達成することを目標とする。 本年度の成果は以下の通りである。 (1)機能性配糖体ハイドロゲル・マトリクスの作製 配糖体ポリマーを硫酸化し、放射線架橋法を用いてハイドロゲルを作製した。また、支持体としてセグメント化ポリウレタンを組織侵入に最適な口径をのつ多孔質体に成型し、創傷治癒促進剤および作製した配糖体ハイドロゲルを内面に担持させたマトリクスを開発した。 (2)in vitro実験 細胞増殖因子を機能性配糖体ハイドロゲルへ結合させ、特異的結合能および細胞培養法を用いた増殖因子含有ハイドロゲルの繊維芽細胞の増殖効果をin vitroで観察した。また、得られた硫酸化配糖体ハイドロゲルに種々の増殖因子を含有させ、結合組織再構築を想定した繊維芽細胞の付着・増殖・移動の過程を細胞培養を用いて評価した。 これらの結果から、本研究で開発した機能配糖体ハイドロゲルは、細胞増殖因子を結合し、活性を高める効果が確認できた。しかしながら、最終目的であったin vivoでの評価に至らなかった。
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