本研究は、全国に膨大に残存する民間所蔵文書史料の科学的保存・管理法の確立をめざし、山梨県大月市星野家所蔵文書を中心素材として、(1)安全かつ管理の容易な史料保存設備と保存技術の開発、及び(2)史料管理学の基本原則に基づいた民間史料整理・目録編成技法の開発、の二点について研究を行った。 (1)については、 (1)平成5年度に約3ヵ月間、及び平成6年度に1年間にわたり、小型データロガー(自動温湿度計測装置)を使用して星野家母屋・文庫蔵(共に国指定重要文化財)の室内及び各種文書収納箱(桐箱、茶箱、段ボール箱)の温湿度計測(30分間隔)を実施した。この種の計測はおそらく初めてのもので貴重なデータであるが、データ解析の結果、土蔵建築の環境安定性や桐箱の温湿度変化に対する緩衝作用が明らかになった。(2)上記の分析結果に基づいて、星野家文書の保存環境改善のため、収納箱の改善(桐箱の導入)及び収納封筒の中性紙化に着手した実施した。(3)当初の研究計画にあった「民間所蔵史料保存ガイドライン(仮)」の作成は、骨子をまとめたものの成文化は今後の課題となった。 (2)については、 (1)星野家文書のうち江戸期から明治6年までの目録データ約6000件の入力を完成し、さらに約2000件について原文書の補充調査と目録データの補訂を実施した。(2)パソコンのデータ処理機能を利用し、史料管理学的原則に基づいた星野家文書の文書群構造再構成作業を試み成果を得た。しかし一般的な方法論の完成には至らず、当初の研究計画にあった「民間所蔵史料整理ガイドライン(仮)」の作成は成文化は今後の課題となった。
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