本研究の第一の課題であった資料状況の把握については、アジア経済研究所や国会図書館などを訪問し、その収集・保管状況を調査した。入手しえた情報についてはパソコンによるデータ・ベース化を検討している。 第二に、アジア経済研究所や東南アジア研究センターなどの研究会やシンポジウムに参加し、地域研究者や関連諸科学の専門家から、課題に関するさまざまな情報や研究上の示唆をえた。 第三に、将来のより包括的な研究のための方法論の検討を行った。この期間EAEC(東アジア経済協議体)や人権問題などをめぐるASEANと欧米諸国の見解の対立などもこれまで以上に顕在化した。これらは欧米に比べて順調な経済パフォーマンスを続けているASEAN諸国のいわば自信の現れとみることができる。この結果でもあろうが、法のみならずさまざまな領域での「アジア化」という現象を看取しうることができ、これらを理論に組み入れるために努力した。 その結論を要約するといかのとおりである。ASEAM域内においては、単に経済問題ばかりではなく文化という面においても共通の認識が生まれつつあり、このような認識はこれまで欧米から導入してきた法制度そのものに大きな反省を迫るであろう。その方向については、欧米諸国はもとより、中国やインド亜大陸という他のアジア世界の同様の動きと連動しつつあり、複雑な展開をみせるであろう。この分析のためには、規範の分析を中心とする狭義の法学では不可能であり、法社会学、法人類学及び法文化論的視点が不可欠である。
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