本年度は、オンブズマン制度を初めとする欧米における紛争解決の理念と仕組みについて検討した。欧米では、紛争多発を悪とする思想がなく、むしろ紛争がある社会こそ自由で開かれた社会であり、紛争解決を通じて、社会が住民の需要に応え、時代に適応していくことができるとする。そこでは、紛争を消極的に捕らえず、むしろ紛争が建設的に処理される社会を理想とする。 しかし、欧米でも、訴訟件数の著しく少ない国がある。ノルウェーである。そこで、ノルウェーにおける紛争解決の仕組みを調べ、その結果、裁判前の調停委員会とオンブズマン制度について調べた(「日本人の法観念と紛争多発社会への対応(2)(発表予定)」。また、オンブズマン制度の母国であるスウェーデンをモデルとして、種々の型のオンブズマン制度について、それぞれの機能を明らかにした(「スウェーデンにおける人権擁護とオンブズマン」4月刊行予定)。 この研究は、これらの制度を法による社会統制には限界があるのではないかという視点から位置付け、法の機能について検討した上で、日本における裁判外紛争処理の様々な制度をそのような視点から評価することができないかについて検討したものである(日本人の法観念と紛争多発社会への対応(3)」及び「日本における裁判外紛争処理制度」(発表予定)」)。
|