研究成果の主たる内容は、関西学院大学法政学会発行「法と政治」第46巻第1号以降に連載する予定である(全体として3〜4号にわたる予定である)が、その概要は、次のとおりである。 第1回では、紛争多発社会の現状と問題点を述べた上で、法による社会統制がどのような理念に基づいており、社会的紛争に対してどう対処しようとしているのかを、欧米における法思想家の学説に拠りながら、解明する。 第2回では、紛争及び紛争処理の在り方についての欧米の最新の理論を検討した上で、紛争処理と法及び正義とのかかわりを検討する。正義の理念の虚構性を明らかにした上で、欧米において唯一、紛争の少ない国であるノルウェーにおける紛争解決のための制度として、裁判前の調停委員会とオンブズマン制度について紹介する。 第3回以降では、日本人の秩序や法の観念の特色を明らかにする。予め定められた規範に従うよりは、状況対応的判断を重視する日本人の思考の由来と機能について検討する。次いで、このような日本人の思考が、立法の内容、法執行のあり方(行政指導など)そして紛争解決のあり方(裁判外紛争処理)にどのように具体化されているかを検討し、欧米の理論に基づいて、日本人の法思考が紛争処理のあり方にどうかかわっているかを明らかにする。その上で、日本における裁判外の紛争解決の制度の実態を紹介し、それらの制度をどう評価するか、今後の紛争多発社会に対応するために、紛争解決はどうあるべきかについて提言する。
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