本萌芽的研究によって得られた新たな知見および今後の研究計画は次のとおりである。 1 福祉サービスにおいても個人の意見を尊重した利用者本位の質の高いサービスを提供することが求められている。そのためにサービスにニーズを合わせる(service‐led)のではなく、ニーズに即したサービス(needs‐led)を提供することが課題となっている。 2 上の質を保障するために、総合的な良質保障システムの開発が試みられつつある。すなわち、(1)ケアマネジメント方式の導入、(2)ニーズ判定基準とサービス基準の制定、(3)サービス利用者の権利の定式化、(4)介護費の社会化、(5)定期的な部内評価と部外監査、および(6)苦情の救済システムの導入等の試みである。 3 ケアマネジメント方式は、service‐ledからneeds‐ledへの転換を図るために、ニーズ判定の責任とサービス提供の責任の二者を分離するとともに、そのプロセスは、(1)ケアチームによるニーズ判定から、(2)ケアプランの作成と実施、(3)ケアのモニター、そして(4)ニーズの再評価というサイクルをなすものである。これによって、常時変化するニーズに対応したサービスを提供しようとする。 4 サービス利用者の権利は、自己決定権を基本理念として、(1)情報の権利、(2)ニーズ判定と処遇過程の参加、(3)情報を受けたうえでの選択(informed choice)、(4)プライバシー等が、徐々に形成されつつある。5 ニーズに即したサービスを財源面から保障するシステムとして、措置制度に代わる社会保険方式の導入が検討されつつある。 上記2の6つの方式を個別に調査研究していくことが今後の研究計画である。
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