本年度の研究は次のように実施された。 (1)日本における代表的な都市銀行を選び、研究対象期間であるオイルショック以後の株価の推移をデータベースに作成した。その際、権利落ち等の修正のためのデータも収集した。また、銀行が発行する転換社債のデータも同じように収集した。 (2)当該銀行が保有する株式のデータを収集・整理して、株式持合の実態を把握し、データベースを作成した。 (3)各種の株価指数の動きと銀行の株価の推移とを比較した。 (4)銀行の資本コスト(株式コストに相当する)を計測した。その際には、(2)で整理された株式持合のデータから、資本コストの株式持合の影響を修正した結果を算出した。 (5)(4)で計測された資本コストのデータの長期的な推移と、銀行の財務状況の推移を比較し、景気の変動を示す他の経済指標と比較し、景気循環論の観点からも分析を進めた。 以上の分析により、現時点で得られている暫定的な研究成果はつぎの3点である。 (1)株式持合の実態は、景気の動向などにあまり影響せずに推移している。 (2)銀行の株価の推移は、他の株価指数の動きと相違する。 (3)資本コストも、国債利回りなどの資本市場が要求する他の機会費用の指標の動きとは、やや異なる(完全情報でかつ完全競争的な市場では、両者は一致するはずである。一致しないとしても、動きは同じように推移するはずである)。
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