企業リストラクチャリングと関連があると考えられる“研究開発(R&D)"活動にまず着目し、その成果測定についての先駆的諸研究を参考にすることとした。それらの内、とくにドイツ・キール大学のBrockhoff教授や米国のRavenscraft&Sheerといった諸論者の当該調査研究と同様な手法(一般化最小自乗法・回帰分析など)を用いながら、我が国の半導体メーカーならびに製薬メーカーの売上高・利益等の成果指標と研究開発・広告宣伝費との関連をパソコンを用いて解析した。結果は、ドイツ・米国において得られた調査結果と類似して、研究開発といった“戦略的投資"の成果の発現は決して(1・2年内といった)短期間にではなく、4・5年のラグが伴って生じるということであった。前者(半導体メーカー)の事例調査研究については、10月上旬に愛知大学で開かれた日本経営財務研究学会全国大会で口頭発表し、後者(製薬メーカー)については『(関東学院大学)経済研究所年報』第16集に投稿して発表を行った。今後はさらに、企業リストラクチャリングの実施・活動(インプット)を表す指標として、研究開発費・広告宣伝費といった金額データ以外に、より適切なデータがないかを模索することに努める。また、他方で効果測定に当たっての方法として、アーモン・ラグ推定法の妥当性をさらに検討すべく、他の関連する統計的分析手法との説明力・検証力の比較にも努めていく。使用するサンプル・データも出来るだけ狭い業種に限らず、より広い業種にわたってクロス・セクショナルな分析にも着手したい。
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