研究概要 |
昨年度に引き続き、リストラクチャリングのための一つの企業努力としての研究・開発への支出を、それからの成果としての売上高との対比で分析した。研究・開発投資の効果は3〜5年といったタイム・ラグを伴って発生することが、ア-モン・ラグ推定法によって(半導体・コンピュータ業界5社および医薬品業界11社をサンプルとし)判明した。後者については、昨年度に『経済経営研究所年報』第16集に発表済みである。前者については、口頭で日本経営財務研究学会第18回全国大会(於愛知大学)にて報告したものに加筆し、同学会編集の論集第17集『財務環境の変化と経営財務』(中央経済社刊)に投稿した。(第7章「戦略的投資効果のボックス・ジェンキンス伝達関数モデルによる評価」所収)次いで、M&A(買収・合併)や倒産といった企業の外部からの圧力によってではなく、自発的にその企業の努力で行うリストラクチャリング(ボランタリーリスクラクチャリングという;たとえばスピンオフ等)に限定して、その成果測定の研究に、目下着手している。平成6年10月日本経営財務研究学会全国大会(於一橋大学)において、口頭で「ボランタリー・リストラクチャリングと財務的成果」を報告した。そこで、米国では既にニューヨーク大学のK.John,H.P.Langらによって行われた“業績低迷に対する大企業のボランタリー・リストラクチャリング(The Voluntary Restructuring of Large Firm in Responseto Performance Decline:The Journal of Finance,Vol.XL,VII,No.3,July,1992)"などのリストラクチャリング成果についての調査研究を参考とし、わが国企業についてもそれとの比較を行うため同様の調査を行った。これまで判明した限りわが国企業は米国企業に比べ、一方では従業員数削減をより積極的に行っており、かつ他面で研究開発への支出はさほど減らさずに、より良好な成果を上げているという意外な結果が窺えた。
|