研究概要 |
(1)我々は、高エネルギーX線用高性能位置感応型比例計数管を開発してきた。その間検出器動作機構上極めて基礎的な問題に対して以下の成果を上げてきた。 (a)比例計数管における制限比例領域(Region of the limited proportionality:以下RLPと言う)においては初期電子雲の拡散効果がガス増幅過程に大きな影響を与えていることを初めて実験的に証明した。 (b)更に興味深い事に、高気圧下では初期電子の流動距離に特異的に依存した放電モード遷移が起こることを発見した。 (c)これらの成果により、長い間RLPにおいて観測されてきた不可思議な検出器応答が一挙に見通し良く理解できる様になった。 (2)上述した高気圧下RLPで我々が見出した特異的放電モード遷移の機構を解明するため、SQS(Self-quenching streamer mode)モードとの関連を重点的に調査した。その結果、SQSモードではガス増幅率は初期電子の流動距離にほとんど依存しないこと、しかし比例モードからSQSモードへの遷移確率は流動距離が短いほうが増大することを初めて見いだした。この結果は、(制限)比例モードにおける挙動とは際だった相違を示していることが判明した。 (3)以上の成果を裏面記載の4編の研究論文にまとめて発表した。最後の論文はThird London Conference on Position-Sensitive Detectors,Sept.6-10,1993,London,U.K.に出席し口答発表したものである。またこれらの成果が認められ平成5年度の島津科学技術振興財団研究助成を受けた。 (4)現在、電子雲の時間的空間的構造変化の影響に対する理論的モデルを構築して、データとの比較を行っている。定性的理解は相当深まったが、さらに定量的理解に向けて努力している。また、SQSモードに対して得られた新たな知見を活用して、SQSモード遷移機構を世界に先駆けて解明すべく急いでいる。高エネルギーX線(10-100keV)用高性能位置検出器を開発する応用研究も進めており、10x10cm^2の大面積検出器の試作をした。
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