古地球磁場強度を火山岩から求める実験を行なうための性能を満たしている交流消磁用コイルシステムを設計し、特別注文により購入した。これを既存のアンプシステムに連結したところ、最大磁場などの性能は予定通りであった。また、直流磁場用のヘルムホルツコイルの誘導電流を遮断する問題は、電源トランスをフィルター回路として流用することで解決できた。 ニュージーランド、ルアペフ火山の安山岩試料やアイスランド、クラフラ火山の玄武岩試料を用いて、直流バイアス磁場や最大交流磁場に対する特性等の基本的データを得ることができた。このような火山岩として標準的な試料ならば、購入した交流消磁コイルシステムにより理想的な非履歴性残留磁化(ARM)をつけることが出来ると同時にほぼ完璧に交流消磁することが出来ることが明らかになった。このような基本的測定のほかに、現代に噴出した日本やアイスランドの溶岩試料を用いて、Shaw法によるARMを用いた古地球磁場強度実験を実施し正しい地磁気強度が決定できるかどうか検討した。その結果、ほとんどの場合において加熱によるARMの大きさの変化がそのまま熱残留磁化(TRM)、即ち自然残留磁化(NRM)の変化で近似できると仮定すると正しい地磁気強度が得られることが判明した。 平成6年度以降は、加熱による岩石磁気の変化、とくにARMとTRMの変化がどの程度正しく比例関係にあるか、そうだとすればどんな火山岩でも成立するかなどを詳細に検討する。またTRMの理論に基づいて磁性粒子の体積分布を見積り、実験結果や顕微鏡観察と比較することにより加熱による岩石磁気の変化が鉱物学的にはどういう現象なのかを理解する。
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