初年度に設計し、特別注文により購入した交流消磁コイルシステムを使用して、非履歴性残留磁化(ARM)を用いた古地球磁場強度実験の信頼性についての実験を行なった. 導入したコイルシステムでどの程度理想的なARMをつけることができるかの基本的実験は、ニュージーランド、ルアペフ火山の安山岩試料やアイスランド、クラフラ火山の玄武岩試料を用いて、直流バイアス磁場や最大交流磁場に対する特性等を調べることで行なった.当初の設計通りの性能が得られたので、現代に噴出した日本やアイスランド等の溶岩試料を用いて、Shaw法によるARMを用いた古地球磁場強度実験を実施し、正しい地磁気強度が決定できるかどうか検討した.その結果、ほとんどの場合において加熱によるARMの大きさの変化がそのまま熱残留磁化(TRM)、即ち自然残留磁化(NRM)の変化で近似できると仮定すると正しい地磁気強度が得られることが判明した. Shaw法は本来は加熱による岩石磁気の変化がないと判断された試料のみから結果を得る方法であった.しかし本研究で示したように、加熱による岩石磁気の変化が及ぼすTRMの変化をARMの変化に比例すると仮定すると、少なくとも本研究で使用した火山岩試料については、正しい古地球磁場強度が得られる.そこで、加熱によるARMとTRMの変化の比例性を検証する実験を開始した.まずは日本の安山岩を用いて、加熱時間を10分から1時間まで変えながら、ARMとTRMの大きさを比較した.まだ少数のデータを得た段階であるが、試料によっては比例関係が成立しないこともあり、強度実験に際してこれをどう検出してどう補正するかが今後の課題である。
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