研究概要 |
大気や海洋は様々な現象が相互に影響を及ぼしあう複雑な系であるが,これまでの研究においては,個々の現象の理解に重点がおかれ,その現象を理解するために最適な近似が行われてきた.ところが,それらの現象が組み合わさった複合系を考えようとすると,個々の現象の研究に使われた近似がそれぞれ異なるため,そのままでは簡単に組み合せることができない.計算機を使えば,そのような近似をせずに問題を解くことは可能であるが,その場合には,すべての現象が混在して,それぞれの現象が区別できなくなってしまうため,これまでに得られた個々の現象に対する物理的知識が使えなくなってしまう.本研究では,これまでに得られた個々の現象に対する物理的な知識を生かしつつ,全体として整合性のある流体複合系の力学理論を構築することが目的である. 平成5年度において,古典的な不安定問題の簡単な場合について,構築化された波を定義し,不安定問題はそれらの波の共鳴問題と等価であることを示したが,本年度は新しい理論における運動量の意味を再考し,より一般的な場合に適用できるように理論全体を一般化することを試みた.その結果,不安定問題すなわち波の共鳴問題における相互作用係数が,その波の運動量に比例することが示された.これにより,新しい理論のなかで形式的な存在であった係数に,物理的意味が与えられ,一般化の指標が得られた.さらに,この指標にしたがって,理論を一般化した結果,西岸境界流のような場所においても適用可能であることが確認された.
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