本研究は固体表面における吸着分子のダイナミクスを新しい低エネルギーイオン散乱分光法を用いて観測しようとするものである。 本研究で使用する二次元表示型エネルギー分析器およびそれを収納する真空チャンバー等はほとんどが当研究所の付属工場で自作したものであるが、本補助金申請後に行った予備実験で、それらの機器に改良の余地があることが判明した。検討の結果、それらの点をまず改良する事が将来研究を発展させていく上で不可欠となると判断し、本年度は装置の改良を重点的に行った。主な改良点は以下のとおりである。(1)二次元表示型エネルギー分析器を構成するメッシュ半球として今まで目の荒いメッシュを成形して使用していたが、これでは半球からの電場の染みだしのためにイオン散乱の角度分布がゆがんで観測されることが分かった。今回、目のずっと小さいメッシュで半球を作り電場の染みだしを抑えるようにした。(2)二次元表示型エネルギー分析器では表面から出てきた荷電粒子をピンホールを通過させることによってエネルギー分析する。従って正しいエネルギー分析のためにはピンホールをスムースに駆動できる機構が必要でありその製作を行った。(3)今までより高い真空度を得るために真空チャンバーの溶接部分を手直しし、内面研磨を行った。 本研究ではさらにLEED観測のための磁気シールドケースの製作を行い、それにより地球磁場が十分遮蔽できることを確認した。以上のように改良された装置を用い、今後はLEED像観測による装置のキャラクタリゼーションを早急に行い、イオン散乱パターンの観察による表面構造決定の手法の確立、さらには吸着分子表面ダイナミクスの研究へと展開してゆきたいと考えている。
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