1.目的 光合成は光エネルギーを化学物質へ変換するきわめて効率のよいシステムである。本研究の目的は、分子の配列や分布状態が制御された分子集合体を設計し、葉緑体に匹敵する光エネルギー変換機能を有する人工光合成システムを構築することにある。そこで、Langmuir-Blodgett膜(LB膜)や二分子膜のような二次元分子集合体を構造的な基礎とし、光をエネルギー源として酵素等の触媒により有用な化学物質を合成する超分子光反応器を開発する。今年度は電子伝達機能を持つ二次元分子集合体の作製を行った。 2.ビオロゲン親水基を有する両親媒性化合物の合成 ビオロゲン基は光化学的あるいは電気化学的に還元され、還元力の強いカチオンラジカルを生ずる。そこでLB膜や二分子膜のような二次元分子集合体を形成し得るビオロゲン化合物の合成を行い、その集合体形成能ならびに酸化還元挙動を調べた。疎水鎖内にアゾベンゼンやビフェニル等の芳香族セグメントを有するアルキル鎖の末端にビオロゲン基を有する化合物は水に溶けて二分子膜を形成した。 3.電荷移動錯体の形成 ビフェニル基を有する化合物では二分子膜を形成することによって、ビフェニルとビオロゲンの電荷移動相互作用による新しい可視部の吸収が出現した。電荷移動相互作用の出現は化合物の化学構造、とりわけアルキル鎖長に大きく依存することが明らかになった。さらにこの発見は電荷移動錯体の二次元配列を意味しており、電荷移動錯体の光励起による電荷分離と二次元分子集合体中での電子移動の可能性を強く示唆するものである。
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