本研究では、ベクトル性を有する反応場としての二分子膜やLB膜などの二次元分子集合体に着目し、光励起エネルギー移動や電子移動と酵素反応を有機的に組み合わせることで光エネルギーを化学物質の生産へ変換する超分子システムを構築する。このシステムの反応の素過程は、(1)光エネルギーの効率的な捕集、(2)光励起にともなう電子の生成と蓄積ならびに輸送、(3)酵素などの解媒分子への効率よい電子移動、からなる。そこで電子受容体でありかつ還元解媒として知られているビオロゲンを親水基に有し、疎水鎖内に電子供与体でありかつエネルギー供与性も期待されるビフェニル基を有する両親媒性化合物を合成し、その二分子膜形成と上記素過程の検討を行った。その結果、 1.4、4'ジピリジルを親水基とし疎水部にビフェニル基を有する化合物は二分子膜を形成することで特異な分子配向をとり、隣接する分子の親水基と疎水部が近接する。その結果450nm付近にビオロゲンとビフェニル間の電荷移動錯体に基づくと考えられる新たな吸収が出現した。 2.フラッシュホトリシス法により電荷移動錯体を光励起したところ、光誘起電荷分離とそれに伴うビオロゲンラジカルの生成を見いだした。二次元に規則配列したビオロゲン親水基間での電子交換により生成したビオロゲンラジカルの長寿命化していると考えられる。 3.二次元ビオロゲン集合体から酸化還元酵素への電子移動を電気化学的手法によって調べるために、ポリイオンコンプレックス法でLangmuir-Blodgett膜として電極上に固定し、フラビン酵素(ジアフォラーゼなど)によるNAD還元反応の電気化学的メディエーター機能を有することを明かにした。
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