研究概要 |
溶液内反応において電荷密集型分子集合体は複雑な対イオン結合挙動を示すが、その第一要因は表面に形成された強力な静電場である。イオン-イオン間の静電的相互作用の集積に基づくこの特性は多様な形態の高分子イオン群に共通しており、これらの反応場形成と深く関連している。この高分子イオン系のイオン反応への静電効果を定量化するために、高分子イオンマトリックス近傍に外部溶液相とは異なる゙高分子電解質相″を仮定する゙2相モデル″を用いた。すなわち、この2時間の対イオン分布をDonnan側に基づいて考察した。弱酸性高分子イオン(カルボキシメチルデキストラン (CmDx)、および、カルボキシメチルデキストランゲル(CM-Sephadex))の酸解離定数を解離度および添加塩濃度の関数として表現し、各条件下での゙Donnan電位″および゙Donnan相体積″を決定した。また、強酸性高分子イオン(デキストラン硫酸(DxS),およびスルホプロピルデキストランゲル(SP-Sephadex))の多価金属イオン(Ca^<2+>,La^<3+>)との結合定数を添加塩濃度の関数として表現し、同様に、゙Donnan電位″および゙Donna相体積″を決定した。更に、デキストラン系高分子イオンゲル(CM-Sephadex、およびSP-Sephadex)では結合平衡測定と同時に実効ゲル相体積を測定し、上述の計算より得られたDonnan相体積と比較した。体積電荷密度の高いゲルの場合、両者の値は一致し、線状高分子イオン、およびこれを架橋した高分子イオンゲル、の対イオン結合平衡は共にDonnanモデルにより表現可能であることが立証された。線状高分子イオン系(CmDxおよびDxS)のDonnan相体積は固定電荷間平均距離の関数として表現すると、イオン基の特性の違いにかかわらずCmDx系、DxS系、共に同一の値を示した。
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