平成5年度は感応物質の合成と応答性について検討した。 1)感応物質としては希土類元素、Y、La、Ce、Nd、Euのクロラニル酸塩を合成し、クロラニル酸バリウム塩と比較検討した。先ず、塩の組成について熱重量分析(TG分析)、元素分析、IR測定により測定した結果、クロラニル酸バリウム塩(CLB)は成書に報告されているように3水和物であったが、その他の希土類とのクロラニル酸塩は9水和物と思われる。 2)クロラニル酸塩の中で陰イオンに対する応答性を検討した結果、クロラニル酸バリウム塩(CLB)は硫酸イオン、クロラニル酸ランタン塩(CLL)とクロラニル酸ネオジム(CLNd)はりん酸イオンと生体関連物質であるアデノシン-5′-りん酸塩(ATP、ADP、およびAMP)に対して高い応答性を示した。そこで、感応物質とPVCの組成比を調べ、CLB、CLL、及びCLNdの場合、PVC75mgに対し75mgの膜が安定した応答性を示し最適である事がわかった。しかし、CLNdは溶解性が大きく、CLLの方が感応物質としてすぐれている事がわかった。 3)応答に及ぼすpHの影響はいずれの場合も、pH4からpH11の範囲で一定であった。選択性は良くなかったが、低濃度の共存イオン下では影響は小さく、有機化合物中のイオウの定量に適用し、良好な結果を得た。 4)これらの膜の応答メカニズムにつき検討し、この応答性はよう化物イオン電極、すなはちシアン化物イオン選択的電極と同様のメカニズムで応答すると仮定し、遊離したクロラニル酸イオンを高速液体クロマトグラフィーで測定し、その時の起電力を測定した結果、硫酸イオン、りん酸イオンの応答は遊離したクロラニル酸に対し応答している事が判明した(これらの結果は平成6年度日本化学会67春季年会2M510、青山学院大学にて発表予定である)。
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