近年、種々のイオン選択性電極が市販、研究されているが、硫酸イオンやりん酸イオンの選択性電極は開発市販されていないのが現状である。クロラニル酸バリウム塩は硫酸イオンの間接比色定量試薬として使用されている。本研究では有機化合物や高分子中の硫黄やりんの定量の簡易分析法を目的とし、クロラニル酸バリウム塩(CLB)を硫酸イオンの感応物質としてポリ塩化ビニル(PVC)に含浸した固体膜電極による硫酸イオン、感応物質を変えることにより種々の陰イオンの選択性電極を開発するものである。例えばCLBと硫酸イオンの反応は CLB(Ba・Chl) + SO_4^<2-> → BaSO_4 + Chl^<2-> となり、ここで生成したクロラニル酸イオン(Chl^<2->)を電気化学的に測定し、間接的に硫酸イオンを測定する方法である。 感応物質としてクロラニル酸とY、Ce、La、NdおよびEu塩化物より金属クロラニル酸塩を合成し、その組成はIR分析、熱重量分析および元素分析により求めた結果、すべてのクロラニル酸塩は見かけ上9分子の結晶水を有することがわかった。また、陰イオンに対する応答性を検討した結果、クロラニル酸ランタン塩(CLL)とクロラニル酸ネオジウム塩(CLNd)はりん酸イオン、CLBは硫酸イオンに対し高い応答性を示した。そこで、硫酸イオンとりん酸イオンの応答性について詳細に検討した。ポリアリルアミンとポリエチレンイミンのクロラニル酸塩を合成し感応物質としての性能を同様に検討した結果、硫酸イオンとアルデヒドに対して応答することがわかった。これらの応答性は陰イオンに対して応答の電位勾配はホフマイスター順列に従うことより置換反応によるものと仮定した。また、イオン電界効果トランジスター(ISFET)の先端にCLB-PVCを被膜し、硫酸イオンの応答性についても検討し、同様の結果を得た。
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