1.実験植物の選定 本研究目的は、水生植物の中でも特に強い嫌気耐性を示す植物の適応現象を、主に代謝生理の面から説き明かすことにある。仙台市近郊で自生し、その目的に適った水生植物で入手可能なものを、本学理学部植物園の内藤俊彦博士の協力を得て検索した。その結果、仙台市愛子の河川に自生しているガマ(Typha latifolia L.)を先ず実験材料としてスタートすることにした。ガマの温室内での栽培も試みている。今春の生育状況によっては、栽培法の改善も検討しなければならない。 2.ガマの(絶対)嫌気条件での成長 市販窒素ボンベガスを培養器(3Lデシケーター)に数十分間連続通気し、これを1〜2日おきに行なうことによりガマの根茎を嫌気処理した。25℃、暗黒のこのような嫌気条件で、ガマの幼芽は少なくとも1ヵ月は生存し、成長することが分かった。嫌気条件での成長と代謝活性について、二酸化炭素の放出量の変動や、^<14>Cグルコースを用いた糖代謝の変化について検討を加える予定でいる。 3.ガマの嫌気条件下でのタンパク質合成 嫌気条件で特異的に発現しているタンパク質を検索するために、poly(A)^+RNAのin vitro翻訳産物の分析を始めている。嫌気条件で10日培養したガマの根茎から、塩酸グアニジン/フェノール法によりRNAを抽出し、オリゴ(dT)セルロースにより、poly(A)^+RNAを調製した。このpoly(A)^+RNAのin vitro翻訳は、biotin in vitro tranaslation kit(Boehringer)で行い、ビオチン化タンパク質をSDS-PAGEで分離後、PVDF膜にブロットし、ストレプトアビジン-PODのルミノール基質との反応による蛍光をX線フィルムにより検出した。次年度初旬には、二次元電気泳動法により、嫌気条件下で特異的に発現するタンパク質の種類を確定できるものと期待している。
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