顕微鏡や電子顕微鏡の観察から、単細胞緑藻のChlorellaやChlamydomonasでは、生育時のCO_2濃度を5%(高CO_2条件)から通常の空気(低CO_2条件)に移すと、葉緑体内の一区画であるピレノイドをその周りのピレノイドスターチが増大することが知られている。このピレノイドが発達する時ピレノイドのRubiscoタンパク質量も増加していることを初年度示した。そこで、C.reinhardtiiを用いて、核にコードされたタンパク質の合成阻害剤であるシクロヘキシミドを与えたところ、低CO_2条件下でのピレノイドの発達が抑えられた。一方、葉緑体におけるタンパク質合成阻害剤であるクロラムフェニコールはピレノイドの発達を阻害せず、ピレノイドスターチの発達が抑えられた。C.reinhardtiiのRubiscoは大小2つのサブユニットからなるが、大サブユニットの遺伝子は葉緑体に1つ、小サブユニットの遺伝子は核DNAに2つ(rbcS1とrbcS2)存在する。rbcS1とrbcS2に特異的なプローブを用いて、高CO_2条件から低CO_2条件に移行した細胞における両遺伝子の転写産物量を比較した。高CO_2条件下ではrbcS1の転写量はrbcS2の転写量に比べて少なく、ピレノイドの発達する条件に移した時、rbcS2の転写量はそれまでと変わらず、rbcS1の転写はむしろ抑制された。このことから、ピレノイドを構成するRubiscoはrbcS2由来の小サブユニットを持つものが多いのではないかと考えられる。また、ピレノイドの異常な株の探索を続け、ピレノイドが細胞内に2個存在する変異株が得られた。
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