1.ゼンマイ緑色胞子が発芽するとき、葉緑体内の数種類の蛋白質が分解・消失する。これらのうち22kDのポリペプチドに的を絞り、その精製とそれを分解する酵素プロテアーゼの性格を調べた。 2.(1)22kDポリペプチドを含む蛋白質の精製。 葉緑体から低イオン強度・低張液処理によりチラコイド膜を得て、これを凍結融解することにより膜から遊離させた22kDポリペプチドを含む蛋白質を、CMトヨパール、ヒドロキシアパタイト、疎水性クロマト、HPLC G3000SW、HPLC 5C18-300Aなどのクロマトグラフにより完全に精製した。 (2)性質。 nativeでの分子量が79kDの蛋白質で22kDのサブユニットからなる、塩基性蛋白で等電点は測定範囲外の10以上、紫外スペクトルでは280nm域に吸収を持たない。 (3)アミノ酸分析。この蛋白質は、特に、グリシンとアラニンに富む蛋白質である。リジンとアルギニンも多く、この蛋白質の等電点が高いことが説明できる。 (4)N末端のアミノ酸配列を約50残基決定した。検索の結果、新しい蛋白質であることが分った 3.22kD蛋白は吸水後24時間以上経過してから分解が始まる。22kD蛋白を分解する酵素は、吸水前の休眠胞子葉緑体に既に存在しているが、発芽・細胞分裂が始まる前の24時間以内ではその活性は抑制されている。また、発芽が抑制されるシクロヘキシミド存在下でも、この分解酵素活性は抑制されている。酵素には、pH3と9に最適pHを持つ2つのアイソザイムが存在すること、活性促進にSH基を要求することなどが判明した。
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