1.ゼンマイ胞子の発芽に伴って、胞子内の葉緑体蛋白が分解・消失する。特に、22kDのサブユニット4個から形成されている80kD蛋白質を精製して、それを基質とするプロテアーゼの性質を調べる。 2.(1)80kD蛋白の精製 胞子から、先ず葉緑体を調製し、それを低調圧処理することによりチラコイド膜を得る。膜から遊離させた80kD蛋白は、陽イオン交換カラム、ヒドロキシアパタイトカラム、ゲル濾過カラム、逆相カラムなどを用いて、完全に精製した。 (2)80kD蛋白の性質 N末端のアミノ酸配列を決定して、データベースでホモロジー検索をおこなった。狭い範囲では、エラスチンと似ている側面も認められるが、広い範囲では、相同性の高い蛋白質は認められなかったので、この蛋白は未発見の新しい蛋白であることがわかった。 3.80kD蛋白を分解するプロテアーゼは休眠胞子の葉緑体中の最初から存在していることが判明した。胞子葉緑体のチラコイド膜に存在するプロテアーゼを部分的に精製した。この酵素蛋白の分子量はおよそ105kDであることが判明した。この酵素活性は、SH阻害剤であるPCMB等によって阻害され、逆にヂチオスレイトールなどで活性化されること、また至適pHは9であることが判明した。 4.胞子の発芽・細胞分裂、葉緑体分裂、葉緑体内蛋白の消失、光合成の4現象間の相関についての作業仮説を提案した。
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