研究概要 |
成長阻害ペプチド(Growth-blocking Peptide,GBP)は、元々寄生蜂によって寄生され、その発育が終齢幼虫期で停止している、即ち、蛹への変態が阻害されている幼虫血清から単離精製された生理活性ペプチドである。今年度は、主に、GBP遺伝子のクローニングを試みた。精製ペプチドのアミノ酸配列に対応する合成オリゴヌクレオチドプローブを用い、寄生後2日目のアワヨトウ蛾終齢幼虫から抽出したmRNAを元に作成したcDNAライブラリーから5万個以上のプラークをスクリーニングしたが、結局、目的のGBPcDNAはクローニングできなかった。そこで、cDNAをλgt11等の発現ベクターに組み込み、抗体でスクリーニングを行うことにした。その為、先ず、GBPをBSAに修飾しウサギに免疫してポリクローナル抗体を作成したが、GBPにのみ特異的な抗体を得ることはできなかった。次に、同じ抗原(BSA-conjugated-GBP)をマウスに免疫し、モノクローナル抗体の作成を試みた結果、GBP特異的抗体産生クローンを3種得ることができた現在、この内、最も抗体価の高いクローンから抗体を多量に調製しようと進めている際中であり、このモノクローナル抗体が十分使用できるようになれば、cDNAのスクリーニングは勿論、現在も尚はっきりしないGBP合成、分泌器官の同定も可能になるものと期待している。 これとは別に、GBPの誘導機構についての実験によって、GBPはストレスによって誘導されるストレス蛋白質である可能性が高まってきた。未寄生アワヨトウ終齢幼虫を15℃(通常は25℃飼育)に数日間置くと、その血清中にGBP様活性が高まることが観察されたからである。今後、GBP遺伝子のクローニングが成功した暁には、各種ストレス(勿論、寄生も含む)でGBP遺伝子がどのように発現するものかを集中的に研究する積りである。
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