結晶の核形成に振動や流れが影響することは経験的に知られている事実である。ところが逆に流れを完全に抑制した条件下での核形成実験を微小重力を利用して行った。実験はダイヤモンドエアサービスの航空機を用いて放物線飛行の間の20秒間の微小重力を利用した。結晶は珪酸塩結晶(Diopside:融点1350℃)とLiBO_2結晶(融点850℃)を用いた。結晶化の状況は高温その場観察装置でリアルタイムで行った。画像はビデオレコーダで収録し解析を行った。結果は以下の通り。 (1)高温で結晶が核形成、成長する姿がその場観察法で初めてとらえられ、成長温度、流体の流れとの関連データも取得できた。 (2)LiBO_2結晶の成長速度の過冷却度依存性を微小重力で正確に測定できた。これより、融液からの結晶成長でも、表面キネティクス(主に界面での分子の取り込み)が重要な律速過程であることが示された。ちなみに1gでは相関性はほとんどない。これは重力下での複雑な対流(熱対流、溶質対流、マランゴニー対流)のせいであろう。μgでの結晶成長/溶解速度は1gよりはるかに小さい。 (3)1gでは極めて核形成が容易な過冷却度でLiBO_2結晶のμg実験を行ったところ、核形成は起こりにくかった。珪酸塩結晶でも同様の傾向が確認された。重力下での核形成は雪崩的に起こり温度分布との位置的相関が見られないのに対して、μgでは温度分布に完全に依存することが初めて明らかになった。これにより、核形成条件が位置的にも正確に決められた。この観察は、2次核発生の究明にとっても重要であろう。
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