研究概要 |
バイオマシニングとは、本研究グループが提唱している造語であり、現在までのところ加工の分野では実現されていない生物的エネルギを活用する新しい加工法である。すなわち、最近発展の著しいバイオテクノロジを加工の分野にも適用できないかを検討することを目的としており、ここでは微細加工に応用する目的でミクロンオーダのバクテリアを用いた金属の除去加工法を提案している。もしこのような微小な微生物に所定の位置に所定の量の加工を行なわせることができるならば、究極のマイクロマシニング用ツールとして活用することも可能になると考えられる。本研究で用いた細菌は、無機物を酸化してエネルギを獲得し、空気中の二酸化炭素を同化して生活している独立栄養細菌の一種で、Thiobacillus ferrooxidannsと呼ばれる鉄酸化細菌である。この細菌は大きさが直径0.5ミクロン,長さ1ミクロンの短桿菌で、おもに鉱山の廃水など酸性の液中に棲息しており、ATCCには現在7種類が登録されている。本年度は、この細菌の純粋培養の方法を確立するとともに、若干の金属加工実験を行なった。培養は9K培地を用いて28℃で約1週間振盪することにより、1cc中に細菌を約10^8個含む加工液を得ることができた。加工実験は、この液を用いて各種の工作物に対して行なわれた。その結果、加工量は加工時間にほぼ比例し、純鉄で14μm/hr、純銅で20μm/hr、純亜鉛で30μm/hr程度の加工速度が得られることを確認した。
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