液体が強くサブク-ルされている場合に、本来遷移沸騰や膜沸騰が生じる領域において、伝熱面温度がほとんど一定に保たれたまま、熱流束が核沸騰の限界熱流束をはるかに越えたところまで増加する現象、すなわち気泡微細化沸騰について、その伝熱機構と安定性に関する実験的研究を行った。 気泡微細化沸騰は供給される液体のサブク-ル度と流速に強く影響され、それらの大小により大きく分けて2種類の異なった様相、および伝熱特性を示す。一つはサブク-ル度と流速がともに大きい場合に生じるもので、大きな沸騰音を伴いながら微細気泡を伝熱面から噴き上げ、熱流束は2×10^7W/m^2以上にも達する。これをS-MEBと名付けた。このとき伝熱面まわりの液体の圧力変動は大きいが、伝熱面の温度変動はCHFに比べて小さく、気泡運動の激しさと、液体の攪拌の強さを示している。もう一つはサブク-ル度と流速がともに小さい場合に生じるもので、気泡は微細化するが激しい攪拌は行われず、音も静かである。また、熱流束の急激な上昇もない。これをC-MEBと名付けた。中間的な条件では、両者の間を往復振動するなど、不安定な様相を呈する。 また、気泡微細化現象はサブク-ル核沸騰とは異なる大きな音を発生し、その音圧レベルは二つの卓越した周波数を持つ。周波数500〜1250Hzに現れるピークは特に大きく、気泡微細化現象独特のピークである。周波数8000〜16000Hzに現れるピークは、高サブク-ル時には核沸騰でも生じる。それぞれのピークの強さはサブク-ル度および熱流束と密接な関係がある。一方、気泡挙動については、気泡微細化現象では気泡が伝熱面に向かって崩壊すること、気泡の崩壊周波数と音圧レベルの周波数は類似した分布を示すことが明らかになった。このことから、気泡微細化現象の熱伝達には気泡の崩壊が重要な要素として関わっていることが考えられる。 以上から、気泡微細化沸騰発生後の状況はかなり明らかになったといえる。今後は、気泡微細化の初生と、各変動の1サイクルと気泡挙動の対応が明らかにされる必要があろう。
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