研究概要 |
障害者代用人工声帯,代用人工音声開発を目的として、実人間の音声発音機構のメカニズムを力学的な立場から解明し、この結果を利用して、生体模擬人工子音と人工母音の音声生成実験を行う一方、一連の理論解析によって、そのメカニズムを理論的に明らかにした。主な結果は次の通りである。 (1)声帯〜声帯軟骨〜声帯筋から成る実人間声帯系と等価な人工広帯域発音装置を試作して、模擬生体筋張力と声帯膜の大きさを変化させた一連の呼気流実験を行った結果、膜の振動と源音声が150Hzから2000Hzまでの任意の広帯域で自励振動と発音を構成する事を実験的に明らかにした。これより人工声帯生成の見通しが得られた。 (2)動的超弾性有限要素解析理論と流体連成解析理論を構築して、これを組み合わせた一連の解析から、実人間の声帯および試作人工声帯の広帯域自励振動生成のメカニズムを理論的に解明し、理論と実験がよく一致する事を示した。 (3)声帯源音からの5母音生成が口腔系を模擬した結合共鳴箱の原理に基づいて容易に発現できる事を実験的に明らかにし、実人間のもとの比較してよい相関のある事を示した。 (4)非定常音場の有限要素法を開発して、口腔声道形状を3次元スプライン関数表現する方法を開発し、これらを組合わせて、5母音生成用の声動形状を理論的に逆探索できるシステムを構築した。数値解析により得られる5母音の周波数構造は実験とよく一致し、人工の5母音用口腔〜声道形状生成の見通しが得られた。 (5)人工舌と人工口腔を組合わせたk,t,s子音生成実験を行って、子音の周波数構造が頭部の3〜8kHz帯雑音スペクトルと後続5母音の組み合わせで形成できる見通しを実験的に明らかにした。 (6)Lighthillモデルと乱流場のk-εモデルと用いた子音頭部源音生成の理論解析を行い、k,t,s音について口唇出口部実人間音声計測結果から、逆問題として、理論解析により推定した舌狭め部の子音源音の周波数スペクトルを、k-εモデルによる解析結果と比較した結果、よい相関のある事を示した。これより、人工子音生成に関する見通しと理論モデルについての見通しを得た。
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