研究概要 |
医療用精密作業を行うためには生体と適合しやすく、使い捨てタイプのアクチュエータであることが望ましい。全身麻酔の基本要素である、意識消失、沈痛、不動化を行う方法として、吸入麻酔は体内への吸収と排泄が肺を介してバランス良く行える方法といわれている。その主要な作業内容は、麻酔ガス誘導管を気管支に内壁をきずつけること無く挿入することである。この作業はこれまで僅かな内壁からの反力をもとに勘を働かせながら手探りでおこなわれてきている。気管支の内壁は丁度プリンのように柔らかく傷つき易い。本研究では、まず初年度(平成5年度)に実作業の現場実態調査を行い、作業機器、ガスの種類とチューブ類、作業手順を把握し、次に子供や太った大人の作業の場合には通常用いられているワイヤ式の堅い内視鏡が使いにくいことが分かり、報告者らのシリコンゴムからなる柔らかいアクチュエータをガス誘導管として気管支に挿入する方法を具体的に検討することにした。設定課題として、(1)直径5mm,長さ50mmのフレキシブル・マイクロアクチュエータ(以下、FMAと略す)を作製し、作業の短時間化と確実化のため(2)食道と別かれる気管支の空洞を検出する光センサからの信号に基ずき3自由度の動きのできる空気圧駆動のFMAを用いて挿入方向を自律的に選べるものとした。その具体的方法として、0.2mmの光ファイバ2本(光源用と反射光用)をFMAの中心軸に埋め込み、その周りを3つの空気室で囲むものを試作した。本FMAは軸心に光ファイバを埋め込んであるため、曲げ剛性が大きくなり、従来0.25MPaで90°曲がったものが0.4MPaまで高圧化する必要があるが、現場では特に問題とはならない。本装置の実用性を調べるため、通常の大人の声帯・気管支モデルを2次元的に作製し、表面をアクリル板で可視化し、FMAの操作性をビデオ映像をもとに作業時間と作業精度について定量化したところ、熟練者ではなくても、作業の短時間化と繰り返し精度の向上をはかれる見通しがえられた。
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