近年、情報化社会を迎え、光変調や光双安定性等の機能を有する光・電子デバイスの開発が大きな技術的なターゲットとなっている。 本研究は、〓-〓族半導体量子井戸構造の室温励起子吸収のシュタルク効果を利用した変調素子の基礎特性を評価し、動作可能な波長領域を明らかにすることを目標とするものであり、平成5年度の研究により以下のことが明らかにされた。 (1)ZnCdSe/ZnSe系量子井戸の励起子結合エネルギー(E_B)の井戸幅依存性に関する理論計算を行い、井戸をZn_<0.80>Cd_<0.20>Seとした場合、井戸幅25AのときにE_B=40meVと最大になり、室温における強い励起子吸収が期待できることを明らかにした。 (2)励起子エネルギーレベルの電界強度依存性に関する理論計算を行い、シュタルクシフトに関する検討を行なった。 (3)分子線エピタキシャル成長において、マイクロ波プロズマによる活性窒素ドーピング装置を開発し、実効アクセプタ濃度1.0×10^<17>cm^<-3>を実現した。この成果を基に、p-ZnSe:N/i-ZnSe-ZnCdSe MQW/n-ZnSe:Clから成る吸収変調素子を試作した。 (4)素子の電界変調反射スペクトル観察を行い、許容及び禁制遷移に対応した量子準位におけるサブバンド間の準位の同定を行った。その結果、設計通りのバンド構造となっていることを明らかにした。 (5)n=1 heavy hole励起子吸収を利用した変調において、最大△T/T=0.5を実現した。 (6)理論的な検討から、さらに大きな変調度を実現するためには、励起子線幅を狭めることが必要であり、このためには井戸層に2次結晶を用いることが有効であることを提案した。
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