本年度はエネルギーパケットの概念に基づく低消費電力回路の実現の為の基礎理論として、MOS形トランジスタでエネルギーパケットが伝送される際に消費される基本的最小エネルギーを計算する手法を見出した。これはMOS形トランジスタのゲート・ソース間の静電容量の時間的ヒステリシス特性に由来するものであるが、時間依存ゲート容量モデル及び数値シミュレーションの両方を用いて一貫性のある最小エネルギーを求める事が出来ることを示した。それによれば、エネルギーパケット伝送回路は理論上、従来のCMOS論理回路の様にエネルギーをスイッチング毎に消費する回路方式に比較して1/4から1/5程度まで低減できる可能性がある事が判明した。MOS形トランジスタのゲート容量以外は時間的ヒステリシスは殆んどないためエネルギーパケット方式は更に低消費電力化に有利であることになる。 同時に次年度に向けてエネルギーパケットの概念を具体的に実現する回路方式に関しても研究をスタートしてるが、まだ模索の段階である。
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