研究概要 |
本研究は,放送局から発信される電波が空間にその電界強度の強弱のパターンを作るマルチパスフェージング現象を利用した電波空間フィルターによる速度計測とGPSの活用について調査研究したものである. 本研究では,(1)マルチパスフェージング現象の調査,(2)高速チューナの開発,(3)GPS電波の利用,(4)GPSを含むセンサ融合について研究計画を立案し、次のような新たな知見を得ることができた。 (1)マルチパスフェージング現象の調査;電波のマルチパスフェージングにより作られる電波電界強度パターンを速度計測の空間尺度として利用する場合,中央値変動と呼ばれる低周波成分が最大に誤差の原因になる.この中央値変動による影響を避けるために空間フィルタの考え方を導入し,2本のアンテナで捕らえた電界強度の空間差分をとると良いことが分かった.アンテナの数を増やすとそれに比例して精度が向上する. (2)高速チューナの開発;(1)のマルチパスフェージングを走行中の自動車から捕らえるためには,Qの低いチューナを開発しなければならない.Log増幅器を利用して,時速100km以上で走行しても十分電界強度変化を捕らえるチューナを開発した. (3)GPS電波の利用;GPSからの電波によるマルチパスフェージングの検出を試みたが,衛星自体が運動していることや,GPSシステムのサンプリング時間の問題から,(1)電波空間フイルタには現在のところ使えない. (4)GPSを含むセンサ融合;GPSからの位置情報と車両のセンサー(スピード計とレートジャイロ)の情報をカルマンフィルタを用いて融合した.地図情報が不必要な程度のポジショニングが可能であった.
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