コンクリートの供試体の圧縮強度のバラツキを記述する理論を誘導した。これは、強度のバラツキが各供試体の初期不整(供試体の個体差を表わす分岐パラメータ)であるという仮定に基づき、初期不整の介在による強度の低下量を確率論的に評価したものである。圧縮強度の確率密度関数が陽な形で求まるので、実験データの分析に有用である。 実験の第一段階として、同一寸法・同一材料の試験体を多数(40〜50)同時に作成し、1ケ月後に圧縮強度試験を行ない強度変動のヒストグラムを求めた。このヒストグラムと理論的に求めた確率密度関数とを比較し、両者は良好に一致していることを確認した。また、カイ2乗検定を行なった結果、本理論は従来の定説であった正規分布よりも、実験データを記述しえることを明らかにできたことは本研究の大きな成果であった。現在、供試体の圧縮強度や粗骨材や細骨材の粒径と粒度分布を種々に変えた実験を行なっているところである。 実験の第二段階として、供試体の寸法を種々に変えた実験を行なった。各寸法毎に数ケースしか実験しておらず、全くの予備段階であるが、本研究の最終目標である「分岐による効果と破壊力学的な効果の混在」を示すことができそうである。 現在、強度変動の成果を投稿論文として執筆中であり、寸法効果の成果もデータがそろい次第執筆する予定である。
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