本研究の目的は、地球温暖化による水資源量の変化や人口増加および水利用の高度化による需要量の変化を考慮した持続可能な水資源システムの策定にある。そのため、流域の上下流問題や水量水質の多目的問題を扱おうとしている。 本年度は計画初年度として研究の全体構成を計ると共に、資料収集と基礎理論の定式化を行なった。 まず、コンフリクトアナリシスに関しては、水資源開発を例にとってその適用性を検討した。住民、自治体(国)をプレイヤーとする2人ゲームを行ない両者間で妥協の計りうる合理解の抽出が可能であった。ここにファジイ理論を導入することによって、曖昧な情報下での意志決定が可能となろう。 続いて、持続可能な水資源開発計画であるが、地球温暖化での水資源量の変化をファジイ量で表現し、ファジイ線形計画法で最適施設計画の定式化を行なった。水需要量もファジイ量とし、ファジイ値が最大になるような施設計画を求めた。貯水池は月単位の操作を行ない管理方式も同時に求めることが出来た。得られた施設計画に対して、建設期間を3ステージと仮定し、各期での水資源量や水需要量を温暖化や社会変化に対応するファジイ量と見なし、ファジイ動的計画法により建設順序を求めた。ただし、目的関数は需要量に見合う供給水量の達成であり、貯水池操作は施設計画で得られたものを使用した。 一方、水質予測や生態系に関しては、現在定式化であり明確な成果までは得られていない。今後、ファジイ理論との結合を計り、最適化モデルに組み込みたい。
|