本研究は、平成5年度と6年度の2年間に渉り行われた。平成5年度は、中空前駆体微粒子の調製条件のみを検討した。分子設計した前駆体溶液の噴霧乾燥によるムライト中空微粒子の調製が可能であったが、非常に均質であり活性なため、低温で化学量論組成のムライトに結晶化することがわかった。平成6年度は、前年度の結果をさらに詳細に検討し、前駆体中空微粒子を高収率で調製できる条件を検討した。また、調製した中空前駆体微粒子の焼結も試みた。以下に結果の概要を報告する。 (1)前駆体中空微粒子の調製条件;噴霧乾燥法による前駆体中空微粒子の調製条件をさらに詳細に検討した。(1)噴霧時のノズルを700μmとすると中空微粒子外殻の厚さが薄くなり、冷却時に破裂あるいは収縮する。(2)ノズル径を400μmとすると、i-ブタノールを溶媒で中空微粒子となる粒子の割合が増加する。(3)前駆体粒子は、その形態にかかわらず1200℃以上では化学量論組成のムライトに結晶化する。などの結論を得た。 (2)前駆体中空微粒子の焼結;前述の結果から、i-ブタノールを溶媒として1M濃度で前駆体溶液を調製し、ノズル径400μmにて噴霧乾燥した比較的中空粒子が多い前駆体の焼結を試み、以下のような知見を得た。(1)前駆体微粒子を有機物除去のために800℃で仮焼し、400MPaまでのCIPで成形を試みたところ、中空微粒子が多く存在したために応力が緩和され、緻密な成形体を得ることができなかった。(2)前駆体微粒子は1000℃付近から結晶化しはじめ、1200℃以上では完全に結晶化が終了するため、粘性流動による低温焼結は不可能であった。(3)助剤を添加し、ホットプレスによる焼結を試みたところ、0.2〜1%程度の助剤を用い、ホットプレスすることで緻密な焼結体が得られた。(4)焼結時の傷の残留のため、焼結体の機械的性質の著しい改善は達成できなかった。
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