平成6年度は平成5年度からの継続研究として100-小角散乱同時測定装置をシステムとして完成させ、その測定手法も平成5年度に行っていた100・小角個別の時分割その場測定ならびに100・小角同時の静的測定から、さらに100・小角領域の時分割同時測定へと発展させることができた。平成5年度の時点ではこれらの時分割同時測定にはPSPCとイメージングプレートを併用する予定であったが、放射光実験施設において雨宮助教授らにより開発が進んでいる2次元検出器の試験的利用が許可されたため、PSPCと新しい2次元検出器により、100、小角散乱を同時に現段階では20秒程度、原理的にはサブ秒の時間分割で測定できるようになった。現段階ではまだ解析手法や装置の特性などを含めて開発途上ではあるが、規則化と組成の変化が同時に進行する相変態過程を研究する上で非常に有力な手法が開発できたと考える。 また、その手法のA1基合金の相変態過程の解明への応用として、Al-Li合金の相分解初期、ならびに相分解初期構造の熱的な安定性に関する実験を行った。相分解のごく初期における100および小角散乱強度の詳細な比較から、相分解の非常に早い段階においてもすでに組成変化が認められ、その差異の粒子間距離と比べて100プロファイルの解析から得られる規則化に関するドメインサイズは小さいことがわかった。すなわち相変態初期過程で進行する規則化は長範囲にわたってドメインが定義されるような一様なものではなく、むしろ短範囲の規則構造が組成変化を伴いながら発展していくという描像が正しいと考えられる。規則化に関する特徴的な相関長さと小角散乱での相関長さを定量的に評価するために2相モデルを100プロファイルに対して拡張した。
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