研究概要 |
Al-Li,Ni-Al合金系などの組織制御を考える上でのガイドラインとなる一次の規則化を伴う相分離過程を理解するためには、相分離による空間的な濃度変調と、規則化による空間的な規則度変調を独立に、なおかつ同時に測定することが必須となる。本研究では単純な相分離系の相変態過程をその場定量観察する優れた実験手法である小角散乱法を小角領域のみならず規則反射である100領域にまで拡張することにより放射光小中角散乱法を規則化を伴う相変態研究の新たな手段として確立することを目的とした。高エネルギー物理学研究所放射光実験施設の時分割小角散乱ラインでの実験のため、中角領域を同時に測定するための小中角散乱実験用ビームパスを設計・制作し、小角散乱と同じ空間および時間分解能での規則反射領域の散乱強度プロファイル計測が小角散乱強度測定と同時におこなえることを実証した。 さらに本システムを使ってAl-Li合金の相分離初期構造の測定並びに準安定相であるδ‘相の昇温過程における構造変化の実時間測定をおこない、以下の事を明らかにした。 1)Al-Li合金の相分離初期においては規則領域の発達は組成の揺らぎの発達に先行する。ただし以前の復元過程の研究成果を利用することにより、従来と比べてより初期過程の構造評価が可能になったが、焼き入れ時にすでにわずかな相分離の進行が認められ、相変態初期に規則化が相分離と全く独立に進行しているかどうかの解明には至らなかった。 2)δ‘相の昇温過程においては熱分析において現れる溶解の2つのピークが溶解キネテイクスによって生じるものであり、熱的安定性の議論とは分離すべきものであること、溶解熱は体積変化に直接対応していることを明らかにした。
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