本研究では、イオン交換強化ガラスをモデル材料として、超音波を照射したときに発生する表面弾性波の音速測定から、残留応力と表面のゆがみを測定する事を試みた。 まず、イオン交換法により、ソーダガラス表面にNaとKの交換層を形成した。その結果、ガラスの破断強度は無処理に比較して6倍以上増大する事を明かになった。これは、NaよりもKのイオン半径が大きいために、ガラス表面に圧縮応力層が形成されたためである。 次に、超音波顕微鏡を使用して、イオン交換ガラス表面の音速を測定し、破断強度と比較した。その結果、両者には比例関係が成立する事を見いだした。また、超音波顕微鏡内に小型の曲げ試験機を設置し、ガラスの音速と曲げ応力の関係を測定した。その結果、音速は曲げ応力(引張)とともに減少した。一方、X-Zモード像の解析から、応力によるガラス表面のゆがみを0.1ミクロンの精度で測定する事ができた。 応力と音速の関係およびイオン交換ガラスの音速変化から、ガラス表面の応力分布を決定した。これより、500MPa以上の圧縮応力場の存在が確認された。さらに、周波数を変化させる事により、表面から内部に向かって存在する応力分布を推定する事が可能となった。 以上の結果から、超音波顕微鏡による応力と表面ひずみの同時測定の可能性を実証する事ができた。
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