研究概要 |
現在行われているろう付やはんだ付けでは,平衡状態で良好な接合部を得ることに努力を払っている例がほとんどである.非平衡状態でぬれ速度が制御できれば,さらに広い条件範囲で接合が可能になるばかりでなく,ろう材の設計に応用できる可能性がある.これらを実現するにはぬれの駆動力の大きさを予測,評価できるようになることが必要である. ぬれ性の理論に関しては,180年前に発表されたヤング・デュプレの式からの進歩がない.この理論は平衡状態を前提としたもので,ぬれの速度論に適応するには問題が多い.上記の目的を達成するためには,実験事実に基づき新しい理論を構築していく事が重要である.そのための基礎として本研究では,超高真空-原子間力顕微鏡(UHV-AFM,すでに保有している)を用いて,固体間凝着力のアトムスケールにおける計測を行い,同時に,数値計算に基づく固体表面の量子論的検討を行った. 原子間力顕微鏡による計測の方は,グラファイトと金の間に働くの力を計測する事ができた.さらに異なるぬれ形態を示す材料の組み合わせに対しAFM計測を行うためには, 1)大学の実験室の床が,近所を走る東急電鉄や,大学内工事の影響で振動する. 2)空中電波が計測誤差を生じさせる. 3)電源とアースにある微妙なノイズが誤差を生じさせる. など主に大学設備の問題を解決する必要がある事が判明した. 一方,量子論に基づく数値計算による検討では,固体間に働く力の駆動力となる表面エネルギーを電子密度(ジェリウム近似ではフェルミエネルギーと一義に対応する)と仕事関数などの物性値から評価できることを示した.
|